鳥獣管理フォーラム2014

JWMS鳥獣管理フォーラム「自然公園における野生鳥獣問題」

主催  一般社団法人 鳥獣管理技術協会
後援  環境省日光自然環境事務所、栃木県
日時  平成26年4月26日(土)

  • 自然公園における野生鳥獣問題(辻岡 幹夫)
  • 日光国立公園における野生鳥獣対策 (森川 久)
  • 日光国立公園における新たなシカ捕獲体制 (丸山 哲也)
  • ヤマビルの生息実態と被害対策 (谷 重和)
  • ネイチャーガイドからの視点(仲田 桂祐) 


 

自然公園における野生鳥獣問題(基調講演)

 辻岡 幹夫(自然公園財団日光支部所長)

 

日光国立公園の野生鳥獣問題

 日光国立公園の野生鳥獣問題として第一に挙げなければならないのは、シカの個体数の増加である。シカの個体数が増加することにより、生態系への影響が大きく表れている。一方、シカの生息域拡大に伴って、ヤマビルの分布が拡大しており、ここ数年でヤマビル被害が著しくなってきている。今のところ、ヤマビルは、およそ標高1000m以下にしか生息していないが、より高所にも広がるのではないかと心配な状況だ。平成6年度以降、「栃木県シカ保護管理計画」に基づきシカの個体数調整が行われているが、生息密度は低下しておらず、この間ヤマビル被害は増加してきた。
 国立公園は、保護と利用の二本立てになっているが、日光国立公園では、歩道、旅館、ホテルなどがある人が活動するエリアに、本来保護すべき野生動物であるが人慣れしてしまったクマやサルが出没して、安全な利用上に支障が生じている。また、数年前までは、奥日光にはイノシシはいなかったが、最近は戦場ヶ原の湿原で、イノシシによる掘り起こし跡が見られるようになってきている。奥日光では、昼間は見られないが、夜になると湯元の温泉街にもシカが十数頭出てくる状況で、日光湯元ビジターセンター裏庭に設置されたカメラでも撮影されている。

 

人間が近づいても逃げないシカ 

 

 

 

 

 

 

シカによる植生被害の状況

 奥白根山と五色沼は、かつては日本の特産種であるシラネアオイの生育地があることでよく知られていた所であり、昭和55年の写真を見ると、6月下旬にはシラネアオイが満開だったことがわかる。ところが現在では、シカの食害による影響で花がまったく咲いていない。シカ侵入防止のため電気柵を設置したところでは、柵の内側には本来の植生が残されているが、柵の外はシカの強い食圧が続いて植生が薄くなっている。奥白根山には、かつては豊かな高山植生があったが、今はほとんどなく、わずかにコケモモなどシカが忌避すると思われる植物が残っている状況で、強い影響が出ている。
 前白根山山頂手前の天狗平では今、シカが食べないハンゴンソウが繁茂している。昭和60年に「白根山の植物」という調査資料が栃木県によって作成され、その際に植生調査が行われて、植物の組成表が作成されている。この資料によると、ハンゴンソウの当時の被度は2程度で、多くの植物の中の一員に過ぎなかった。通常、野生のシカは人を見ると逃げていくが、白根山ではシカの方から近寄ってくる。餌付けする人がいるためかと思われる。戦場ヶ原湿原西部の例を示すと、一面に植物があるものの、これらはバイケイソウで、一帯はシカが食べない植物で占められている。また、越冬したシカが樹皮を食べるため、国有林ではネットを巻いて対策をとっているが、ネットの隙間から、樹皮が食べられてしまう状況である。周囲を360度食べられてしまうと、木は枯れてしまう。
 長谷川順一先生の著書「栃木県の自然の変貌」によると、シラネアオイなど60種類ほどの植物が食圧による影響を受けて激減している。丈が低くなり、花が咲かなくなった植物が6種類、もともと丈が低いために食害を受けずに残っている植物が5種類、増加している植物が13種類、シカが好まないために増加している植物が18種類である。深刻な問題として、奥日光の森では実生や若木が見られなくなってきており、数十年先には森が消失してしまうこともあり得ないことではないと思われる。
 湿原や草原群落においても影響は深刻だ。小田代原では一時期名物のノアザミの花が咲かない状況となった。戦場ヶ原湿原では、シカが毎日通る「シカ道」ができて、ワタスゲやレンゲツツジが咲かなくなった。このため、平成13年、環境省がシカ侵入防止柵を設置し、現在は全長17kmで小田代原と戦場ヶ原の全域を囲んでいる。柵の効果は顕著に表れており、柵の中では本来の植生が回復しているが、一方では、柵外では緑はあるがシカが食べない植物ばかりになっているのが現状である。冬の間も巡回するなど柵の管理には多くの労力を要し、また1年間に倒木が90本ほどあり、この内8、9本によって柵が壊されてしまう。また、秋から冬にかけて、ネットにからまるシカも数頭出てくる。こうした場合、銃器による対応ができない時は放獣している。
 一方で霧降高原では、平成時代の始めころシカの食害でキスゲの花がなくなってしまった。このため日光市では平成6年にシカ侵入防止のためのネット柵を設置した。しかし、今年2月の大雪で、シカ柵が破損してしまい、現在補修中である。奥日光ではシカ柵の管理の他に、日没後のライトセンサスで、シカの個体数調査も行っている。
 昨年10月、霧降高原の「大山ハイキングコース」で、私自身もヤマビル被害にあった。霧降高原山麓では、ヤマビルの分布が拡大していて、林業作業への影響がある他、居住環境への影響も出ている。日光全体の山麓地帯に広がってきていて、山に関係する者の脅威になりつつある。

 

シカが増えた原因と対策

 シカが増えた原因は、天敵の絶滅、気候の温暖化、過去に長く続いたメスシカ猟の規制などが考えられる。シカは50㎝以上積雪があると生息ができないと言われている。かつては雪が多く降る年が多かったので、個体数は自然に調節されていたが、気候の温暖化で雪が少なくなった。たとえば昭和59年には日光一体に大雪があり、シカの大量死があった。当時は、シカの食害問題がなかった時代で、大量死が報道されたことで、シカを助けてほしいという寄付金があったり、ヘリで餌になる干し草を蒔いたという時代だった。平成17年も雪が多かったが、餓死はなかった。これは、3月になり雪解けが早かったためかと思われる。今年は積雪が50cmを超える日が30日あり、餓死、凍死したシカも散見されたが大量死には至らなかった。
 国道沿いの落石防護柵に、シカが入っていたことがあった。シカの個体数は減らさなければいけないが、動物愛護の観点から、これは救出した。
 栃木県のシカ保護対策では、長期的には1平方キロメートルあたり1頭を目標に、狩猟規制を緩和し、またメスシカの捕獲を可能にしている。狩猟による1日当たりのメスシカ捕獲数制限も撤廃し、狩猟期間も延長している。
 シカの捕獲がどれだけあったか、大正12年からある鳥獣統計を見ると、かつてはシカが年間100頭くらいしか捕獲されなかった。昭和25年にはメスシカの捕獲が禁止されている。豪雪による大量死を経て、近年になって捕獲数が増えたのは、シカの個体数そのものが増えたためと思われる。個体数調整は、ハンター人口の激減や高齢化で難しい状況である。シカの捕獲を効果的に実施するには、捕獲専門組織や新たな捕獲体制を構築する必要に迫られている。

 

 
日光のクマ、サル対策
 奥日光の地図上に、湯元ビジターセンターと日光自然博物館の訪問者から得たクマの目撃地点をプロットした図を作成すると、クマが人と接触してもおかしくない状況になっている。日光湯元ビジターセンターでは、来訪者を対象にクマの生態に関する知識や防護について指導する「クマレクチャー」を実施していたが、そんな中、平成24年に人身事故が発生してしまった。事故直後は歩道を閉鎖したが、地元としては、歩道が閉鎖されると観光に影響があるという心配もある。また、サルは歩道の休憩場所でハイカーから荷物を奪うという事態が発生している。このような過度に人馴れしたサルを捕獲するため、日光市と環境省が、箱罠を仕掛けたが捕獲には至らなかった。今のところ、湯元では被害がないが、人とサルの関係が危険な状況になっているため、地元のホテルの方を対象にしてサルレクチャーを行って、協力してサルを追い払うようにしたいと考えている。ただ、現実に被害がないこともあり、地元の方の関心や危機感は薄いようだ。
 人慣れしたクマやサルへの対処としては、里地では、野生鳥獣を寄せ付けない集落作りが基本的なスタンスとなる。国立公園の中では、人が野生動物に配慮するというのが基本方針であるが、集団施設地区等や人が多く利用する歩道では、なんらかの距離を保つ方策が必要である。
 自然公園の野生鳥獣問題を解決するためには、行政と専門家、県民、公園事業者、農林水産業関係者など、関係各所による合意形成が必要である。 

休憩するハイカーに近寄るサル 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日光国立公園における野生鳥獣対策

 森川 久(環境省日光自然環境事務所長) 

 

鳥獣保護法の改正

 現在、鳥獣保護法の改正が審議されている。鳥獣保護法の変革を見ると、明治6年、鳥獣猟規則が制定され、銃の使用によって猟をするようになった。明治25年には、網、罠が主流となり、大正7年には狩猟法が作られた。昭和38年には、鳥獣保護の法体制ができ、昭和44年に法律の所管が移った。平成に入ってからは、特定鳥獣保護管理計画制度の制定、地方分権を受けて、国と県との役割分担が明確にされた。平成19年には狩猟の特例が定められている。そして現在、国会において、法律の改正が審議されている。その背景に、シカ、イノシシによる被害、狩猟者の減少、高齢化による担い手不足等があり、積極的に鳥獣を管理し、将来に向けて機能する鳥獣管理体制を構築するということである。法律の改正をして、従来の捕獲規制と保護のための管理から、積極的な個体群の管理という方向転換を図っていきたいというのが国の考えである。
 法律の中身、改定概要は、積極的な個体群の管理から、鳥獣の保護及び狩猟の適正に関するに法律のところに、管理を目的とすることを加える。鳥獣保護事業計画は、鳥獣管理事業計画に改める。さらに、新たな捕獲の実施という意味でいうと、指定管理鳥獣捕獲等事業の創設ということで、都道府県または国が事業を実施できることとしている。また、一定の条件下においては、夜間でも銃の使用による捕獲が可能となる。認定鳥獣捕獲制度の導入、住居集合地域の麻酔銃の許可、罠免許の取得年齢を18歳から20歳にするといったように、基本的には、シカ、イノシシなどの捕獲の部門の推進を法体系として考えている。

 

日光国立公園における保護対策

 具体的に、日光国立公園においての環境省の取り組みは、戦場ヶ原のシカ対策である。平成13年度に、シカ侵入防止柵を設置した。総延長17㎞、面積980haである。国立公園の戦場ヶ原は、保護を図る特別保護地区が246haで、周辺植生も保全することで、一体的に森林保護をする状況である。緊急避難的措置で柵を設置したもので、景観上等の理由から、当初はカラマツの間伐材を利用して設置していたが、その後は柵の強度を上げるために、簡易な構造のFRP支柱に変えた。ネットもステンレス入りのネットにした。柵を設置した980haの中には、河川、歩道、車道などが含まれ、囲えないところがある。その解放部からのシカの侵入を防止したいということで、さまざまな方法で対策している。一部は川の上にネットを設置している。道路や車道については、超音波を流し、シカが嫌がって入らないようにしている。だんだんシカが音に慣れてくるので、録音装置にシカの警戒音を入れて、シカが通ると鳴るようにもしている。車道は、グレーチングを地面に設置して、歩くのを防いだり、ワンウェイゲートで対策を講じている。

 柵の中については、平成18年度から生息数調査をしている。4つの地域を23の区画に分けて、調査員が糞の痕跡などから、生息数の調査をする。この結果、平成18年は45~71頭という高い数字が、25年は7頭ということで、少なくなっていることがわかった。冬の間、日光市の個体数調整事業として柵内でシカ捕獲を行っている成果だと思う。平成18年は柵の中で85頭、平成25年は6頭というように、現在までに152頭を捕獲している。侵入防止柵の効果を検証するために、モニタリング調査も実施している。植生調査、チョウ類や鳥類の個体数調査、また、毎年特定種の花、たとえばレンゲツツジ、ノアザミ等の開花を、パークボランティアに調べてもらっている。ライトセンサスの調査も実施している。

 侵入部等における対策として、平成24年8月に、植生の上を網で覆って、シカが来るのを遮断した。その1年後は、裸地化した部分に植生が戻っている状況で、網の効果が見られる。湿原の植生については、モニタリングで、9か所の調査をしたところ、裸地の面積は減ってきている。湿原においても、回復が見られる状況である。森林の中でも、下層植生が増え、回復が見られる。柵の外で、尾瀬のシカにGPSをつけて調査を実施したところ、尾瀬から日光にシカが移動しているのがわかった。ライトセンサスでは、頭数については大きな変化はないが、5月と10月に多くのシカの生息が見られる状況である。
 この取り組みを続けながら、県、市、行政機関が中心になって、シカ対策ミーティングを実施している。今後は関係機関が連携し、具体的なシカの捕獲事業を展開していきたい。  

 

 

 

シカ対策の効果(湯滝上の開放部)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

日光国立公園における新たなシカ捕獲体制

 丸山 哲也(栃木県林業センター特別研究員)

 

新たなシカ捕獲対策

 日光国立公園内の捕獲対策としては、これまで日光市が中心となって猟友会に委託して巻き狩りを行ってきたが、狩猟者が高齢化・減少傾向にある中で、今後は新たな体制を考えていかなければいけない。
 

行政機関の連携と対策
 シカの管理に関わる行政機関は色々ある。目的はシカの個体数管理だが、行政の縦割りということで、各機関が予算内でやることになる。情報共有し、協力するが、横の交流関連が薄い。ここを有機的につなげて、日光地域シカ対策共同体を今年4月に設立した。それぞれの事業を、大きく共同体の事業として捉え、それぞれが、他機関の事業も自分の事業として協力体制をとる。構成機関としては、環境省日光自然環境事務所、林野庁日光森林管理署、栃木県県西環境森林事務所、栃木県林業センター、日光市である。その要領に基づき、各種手続きの支援、人員補助、技術提供、設備の貸し出しなどを行うこととしている。
 初事業として、奥日光のモバイルカリング(車両を用いた流し猟)を実施した。千手ヶ原の日光市道1002号線内4.8km区間を通行止めにし、トラックの荷台に設置した射台に射手が待機し、シカを発見したら停車して射撃を行う方法である。この事業は、道路規制もあるし、捕獲だけでなく死体回収があるので、多くの人員の協力により実施できた。延べ4回実施して合計35頭を捕獲し、捕獲効率は1時間あたり7.7頭という結果だった。他地域との比較では、静岡の林道では1時間あたり1.4頭、北海道の国道は4頭であり、比較的高い捕獲効率だった。
 高い捕獲効率が得られた理由としては、季節移動の時期で、越冬個体の餌付けの効果が高かったことや、本地域のシカが車両や人に対する警戒心が低かったことが考えられる。警察許認可などの手間もあったが、本地域においては今後も続けていく価値が高いと考えている。

モバイルカリングの様子

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

ヤマビルの生息実態と対策

 谷 重和(ヤマビル研究会代表)

 

ヤマビルの生態

 千葉も神奈川もヤマビルが多く、非常に困っているが、栃木がこれほど多いとは知らなかった。ヤマビルを少なくするには行政、一般の方、観光業、林業の方が協力してやらないと難しい。行政がやらないで放置していると、住民からクレームがくる場合がある。吸血量は1回1-2ccで、気が付きにくい。分布の拡大原因として、シカやイノシシが運び役となっている。詳しくは、ヤマビル研究会のホームページでも紹介している。
 ヤマビルの生態について説明すると、まず手足がない。翅もないが、吸盤が前後に2つあり、シャクトリムシのように歩く。体表面にセンサーを持ち、炭酸ガス、熱、振動を感知し、気づかれないように、1分間に1m位動く。2-3年くらい生き、9月-10月に卵のうから生まれた4-5mmの仔ビルが林道やけもの道で増える。ヤマビルは強靭な筋肉を持ち、背面には黒い3本の線がある。本土にいるヤマビルは1種類で雌雄同体である。秋田の気温がマイナスとなるような地域でも生き残る。これは、冬場に脂肪粒を増やして越冬することができるからである。また杉林の中は温かいので生き延びれる。
 ヤマビルは、前吸盤が小さく、後吸盤が大きい。前吸盤の周囲に10個の眼点あり、明暗を感じることができる。ヤマビルの吸血法は蚊やノミと違って、3つの顎が発達しており、一つの顎に小さい歯が70~80あり、この3つの顎を上下に動かして皮膚を切り裂いていく。その痕は逆Yの字になり、1回の吸血で、30~50の子ビルが増える。この際に、ヒルジンの作用で血が止まらなくなる。


 

ヤマビル分布拡大の原因

 ヤマビルがどんな動物を吸血しているかを調べると、秋田県ではカモシカとノウサギの血がほとんどであった。また鳥はキジ、ヤマドリで、これらは地上徘徊性の鳥なので、突然、角館でヒルが出てくるのは、鳥が運んだことが考えられる。なお、人が主な吸血源ではない。
兵庫県ではシカとイノシシ。神奈川県でも、シカとイノシシ。栃木県にもシカの他にイノシシが出はじめているので、ヤマビルが増えてしまうだろう。ヤマビルは林道でも獣道と交叉するところにヤマビルが大変多い。なお、ヤマビルは、乾燥と直射日光を嫌うので、草刈りや落葉掻きなどの環境整備を地道に行うことが必要である。
 環境省の資料では、日本全国で、イノシシは80万頭、シカは260万頭いる。なぜ、増えたのかというと、温暖化で積雪が減ったこと、林業の衰退、長期間の狩猟禁止などが理由である。北海道を除く山には、ヤマビルが生息している。関東地方の被害は、東京都の奥多摩にもいるし、埼玉県にもいるが少ない、茨城県にはいない、ところが、群馬、栃木県には多い。特に、日光市が大変多い。佐野市、鹿沼市にも増えている。これは、1976年の渡辺さんによると、藤原町や今市の国有林でヤマビルが発生したのが最初で、そこから広がっていったのではないかと思われる。群馬の四万温泉にも大変多く、そこから来ている可能性もある。


 

ヤマビルの対策

 対策としては、ヤマビルは薬剤には弱い。また、化学的防除方法と、環境整備、吸血動物対策、森林修復保全をうまく組み合わせて行うとよい。教育啓蒙等によって、ヤマビルの正しい知識を身に着けることなどが大切だ。吸血被害の70%は足からである。東南アジアでは樹上から落ちてくるが、日本では服装や靴の装備などに配慮し忌避剤を用いれば、吸血防止をすることができる。
 大切なのは環境整備で、7~8年前に、環境省、秦野市、ヤマビル研究会で落ち葉掻きをしたところ、ヤマビルが減った。これは、冬場の地表の温度が40度近くなり、8割を死滅させることができたからで、大変効果的なので、落ち葉掻き、草刈りなどが重要である。

 ヤマビルの前吸盤と吸血痕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

  

 

ネイチャーガイドからの視点

 仲田 桂祐(株式会社日光自然博物館業務部主任)

  

日光への訪問者と自然教育

 自然教育案内役としての立場で、環境教育、地域観光を交えた視点で話したい。ガイドの派遣、観察会の企画実施をしており、戦場ヶ原の赤沼自然情報センターのカウンター対応や、ホームページ、フェイスブックなどから、情報提供も行っている。
 自然解説ガイドとしての活動場所は奥日光エリア。いろは坂を登り切ったところから奥日光と呼ぶが、山岳、森林、河川、湖沼、湿原、草原の多様な環境の生物景観が見られるようになる。観光的には、東京方面から日帰りが多い。地域内の遊歩道整備がされ、体力やスキルのレベル、目的に応じて、利用していただいている。登山、野鳥、生き物、風景を対象としたカメラマンも訪れている。

自然を学ぶ場としての日光と動物

 私は、奥日光を自然を学ぶ場として捉え、ガイドを行っている。ガイド中に学校の生徒に人気があるのは、野生動物が中心である。なかなか出会うことはできなので、なめし皮、動物の糞などで、説明している。なかでも、サル、シカ、クマについては話題になりやすい。
 シカは子供には大変な人気で、出会うと喜んでもらえる。直接的な被害は人的には少ないものの、植生被害の影響が認められる。防護柵の設置後は植物が復活し、6月の戦場ヶ原ではレンゲツツジの美しい景観が見られるようになった。一般団体のツアー利用を考えると、こうした変化は大変喜ばしい。また対策について知っていただくのは、自然保護を学ぶという視点では大変良い。
 ニホンザルも人気である。湯滝周辺ではサルの群れに遭遇することがあるが、距離が保てていて、トラブルもない。ただし、中には餌付けされたサルがいるため、集団で食事をする場所は確保できない、と言うのが学校団体の活動時には悩ましいところ。
 ツキノワグマについては、地域内では痕跡がみられる。実際にクマの痕跡を知ることは、教育になる。ただし、過去に戦場ヶ原で事故があり、メインルート上での出没も多かったため、通行止め、利用者への注意喚起の看板、ハイキング中止を促している。中途半場な情報だけが流れるのも、大変危険であるが、安全第一で安易に中止にしてしまうと、自然体験ができない状況になり、自然を学ぶ場としての活用を考えると好ましくない状況。
 奥日光では、国立公園の機能が尊重され、クマ・サルなど動物資源を保護していくことが必要である。動物との共存を図ることが地域の活性化につながると考える。現場では普及の役割が大きいため、正確な情報提供をしていきたい。また、未だに餌付けがあとを絶たないので、フィールドマナーを知っていただくように支援ができればと思う。

メインルートに出没したクマ 

 

奥日光ガイドツアーの様子

 

なめし皮を使った説明 

 

 

  

 (無断転載を禁ず)